肝線維化マーカーのプロコラーゲンⅢペプチドについて(基準値や異常値の場合の考えられる疾患等)

Ⅲ型コラーゲンの前駆物質であるⅢ型プロコラーゲン(P-Ⅲ-P)のN末端領域が切り離されて形成されるペプチドです。体内でのコラーゲンの生成、線維化の指標として用いますが、すでに沈着した線維量の目安にはならず、線維化の活発さの目安となります。

 

 

プロコラーゲンとは?

コラーゲンは、皮膚、血管、腱、歯など殆どの組織に存在する繊維状のタンパク質で、生体を構成する全タンパク質の約30%を占めてい る。全コラーゲン量の40%は皮膚に、20%が骨や軟骨に存在しており、その他血管や内臓など全身に広く分布している。主なコラーゲン産 生細胞は、繊維芽細胞、軟骨細胞、骨芽細胞である。コラーゲンはこれらの細胞から分泌されて細胞間間隙を埋めており、他の糖タンパク とともに細胞間マトリックスを形成している。さらにコラーゲン分子内および分子外で共有結合による架橋が行われ、成熟コラーゲン繊維となる。プ ロリンのヒドロキシル化には還元剤としてビタミンCが必要で、ビタミンCが欠乏するとコラーゲン合成に異常をきたし、皮膚や血管に障害 をもたらす壊血病。また、プロコラーゲンペプチダーゼ活性が低い場合も結合組織に異常が生じるようです。

 

 

プロコラーゲンⅢペプチドについて

コラーゲンは、3本のペプチドがヘリックスを形成している分子で、結合組織の構成成分として広く生体内に分布している。プロコラーゲンは、コラーゲンの合成過程における前駆体で、ペプチド鎖のN末端とC末端にプロコラーゲンペプチドを有している。細胞内で作られたプロコラーゲンは細胞外に分泌され、両末端のペプチドがプロコラーゲンペプチターゼにより特異的に切断されコラーゲンとなる。P-Ⅲ-Pは,切断されたⅢ型プロコラーゲンのN末端側のペプチドである。肝線維化の評価は、肝生検による組織学的な所見によるのが確実であるが、生検は頻回に行うことが出来ない。そこで、P-Ⅲ-Pの測定は肝内の線維化の程度、特に線維化進展の活動性を知る有効なマーカーと言えるでしょう。

 

プロコラーゲンⅢペプチド異常値での考えられる疾患

肝臓の細胞と細胞の間は、結合組織と呼ばれる線維成分で埋められ、つなぎ合わされています。肝炎が繰り返し起こって破壊と再生が続くと、肝細胞のかわりに線維成分が増えてきます。しだいに線維成分にとり囲まれた肝細胞は、正常な働きが出来なくなってしまいます。この状態が肝硬変です。肝臓内の線維成分が増えると、血液中にも増加するため、プロコラーゲンⅢペプチド(P-Ⅲ-P)の量を調べると肝臓の線維化の進み方や程度がわかります。そのため、これらの線維は線維化マーカーといわれます。肝障害の程度や進み方がわかり、肝硬変の診断に重要です。重症になるほど検査値は高くなります。肝硬変の場合は、ウイルスが原因のものよりアルコールによるものの方が数値の上昇幅が大きいので、その判別の材料になります。
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